~~知っておくべきハンガリー労働法の2つの原則
コロナ禍や供給網の混乱などで、多くの企業が労務費の見直しを迫られたのではないでしょうか。
とあるハンガリー大企業が実際、そうでした。2020年、2021年と売り上げが大幅に減少。そのため、経営者は自己判断でマネージャーにボーナスを支給するのをやめました。「判断する権利」は自分にあると思い込んでいたのです。
しかし、あるマネージャーの妻が法律に詳しく、それは労働法違反と気づくことに。そしてそのマネージャーはボーナスを要求。すると、他のマネージャーも要求して、夥しい金額になったのです。
ハンガリーの労働法では、経営者が独断で年によってボーナスを支給したりしなかったり、またこの人には支給するがあの人にはしない、とすることはできません。これはいったいどういうことなのでしょうか。
ハンガリー労働法の2つの重要な考え方
雇用契約書や社内規定を作るうえで、ハンガリー労働法では経営者や担当者が必ず知っておくべき2つの大事な原則があります。
ハンガリー労働法の2つの大事な原則
- 片務的なコミットメント
- 矛盾行為の禁止
それぞれについて見ていきましょう。
① 片務的なコミットメント (Egyoldalú Kötelezettségvállalás)
これは例えば、ボーナスに関して、労働者と経営者の双方が合意したのでなく、会社側が独自に支給を決定した場合でも、その履行が義務になるということです。
すなわち、会社側が一方的に決めたことでも、それをうまく社内で書面上で規定しておかないと、決めたとたんに従業員の権利になりうるのです。
② 矛盾行為の禁止原則 (venire contra factum proprium、一般的にはSzokásjogと呼ばれます)
❝venire contra factum proprium❞は、「何人らも自らの過去の行動に相反する立場をとることはできない」という規則および信義則のこと。つまり、経営者側は社内で蓄積された規範と矛盾する行為はとれない、となります。
ボーナスで言えば、会社側が2~3年間支払い続けていた場合、雇用契約書にボーナスのことが書かれていなくても、従業員側は期待して当然とみなすものです。そして法律上は、労働者は期待する権利、受け取る権利があるという考え方です。
ハンガリー労働法は、労働者は弱い立場にあるので、その権利は守らなければならないという考え方が根本にあります。そのため、こうした原則が含まれているのです。
どうやってトラブルを事前に防ぐか
通常、ボーナスは雇用契約書ではなく、社内規定で作っておきます。その場合の仕組みは、将来のトラブル発生を防ぐために、よく考えて作らなければなりません。曖昧なままにしておくことが一番、将来のトラブルの呼び水になってしまうからです。例えば、仕組みとして、「売上高により会社側が1年に2回見直して変える権利があります」などとしておきます。
当社の経験からしますと、残念ながら、ほとんどの会社がこれら上記の2つの原則について正しく理解していません。そのため的確な仕組みができていない、仕組みがあってもそれに基づいてきちんと運用されていないなどの例が散見されます。それはハンガリー系、外資系、また企業のサイズとも関係ないのが実情です。
BAc (ビー・エー・シー) では、これまでの豊富な実績を生かして、問題を未然に防ぐよう必要なシステムを設計しています。また、経営者や担当者向けの教育研修の提供もしております。すべて日本語で対応しておりますので、お気軽にお問い合わせください。
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日本会社のしきたりをハンガリー企業のそれと比較すると、大きな違いは、昇格の背景にある人事ポリシー、昇格のプロセスとその回数である。
ハンガリーの労働法は2023年1月1日より変更となることが決定された。労働法関連規制は以下の内容の法案が議会に提出された。
典型的な日本企業と典型的なヨーロッパの会社を比べると様々な違いが見えてくるが、その中で判断の仕方、判断が下されるまでのプロセス、詳しくは仕事を実行する上でのガイドラインとなる原則、考え方、ルールなどは大きく異なるに違いない。